1億2800人の中国貧困層と「神医」

中国で「貧困」と言う時、何を基準にしているのか?

一日当りの収入が1.25ドルという世銀の基準が世界基準になっている。
が、中国は2100キロカロリー摂取を基本に独自に決めた中国の貧困ラインというのがある。

国際機関は「中国の基準は低すぎる、高くしろ」と10年以上も言い続けているが、中国としては「貧困人口」が急に増えるのはよろしくないというメンツ問題もあり、ずっと伸ばしてきた。

それがどういう風の吹きまわしか、昨日の中央扶貧工作会議で突如貧困ラインを2300元に92%も引き上げた。中国の「貧困人口」は去年までの1196元以下で測った2688万人から1億2800万人(農村人口の13.4%)に激増した。

とはいえ、貧困人口規模以上に対策資金をどう使うかが一番問題だ。これからは、「有力産業と自主発展能力養成の2大重点」に突出して投入し、従来の「教育、衛生、社会保障といった部門ごとの社会事業は、財政貧困対策基金を投入する方向としない」という。(30日京華時報A7面)

中国は貧困地区の「産業」といって、郷鎮企業振興に貧困対策のお金をつぎ込んで大失敗した過去がある。田舎、しかも最も拓けていない農村地域で政府が企業のようなことをやるのは危ない。詳細は不明だが、あまり良い予感はしない。

貧困対策と言えば、新鮮味には欠けるが、何と言っても一番基本的な医療と教育が重要だろう。

河南省永城県と隣接する安徽省鍋(金篇でなくさんずい)陽県の村には高熱や下痢患者を不思議な注射ですぐに治す神童ならず神医がいる。何でもこのお医者は注射針を替えたことがないが村人からは絶大な人気を誇っていた。20キロ先からくる患者もいて100人待ちもざらだったという。

しかし、この村クリニックこそ河南省で180人が確認されているC型肝炎蔓延の源流と言われている。

下痢や熱なら、最低限の知識と市販薬があれば、家で簡単に直せる。静脈注射なんててんで必要ないのだが、その簡単な知識も普及していず、信頼できる村医者の人材もいないのが中国の農村の現実だ。

まずはこういう問題から解決していくしかない。「貧困」問題解決にも「神医」はいないのだから。