中国でベストセラーになる教育指南本(その1) 子供は自分の作品か?

最近別のメディアに中国で家庭教育書が売れているという記事を書いた。

この流れは1999年に300万冊売れたと言われている「学習革命」に始まるらしいのだが、一番新しいのでは、2009年に発売された「好妈妈胜过好老师」だ。

この本はすごい、出版されて2年以上経つのに、いまだに朱鎔基やジョブズと並んで総合ベストセラーのトップ10に入っている。開明的で、教育熱心な知り合いパパ2人に強く勧められた。彼らもこの本から多くを学んだと。

なるほど、読んでみると非常に面白い。なぜかというと、中国のごく「普通」な(すなわち残酷な)教育環境に根ざしているからだ。中国の「常識的な現実」「相場」が逆に良くまとまっている。

作者の教育へのスタンスは子供を尊重する現代的なもので洗練されている。この国で私が違和感を感じる中国コテコテの教育理念?を一つ一つ実例を挙げて「違う」と中国の親に解き明かす。こういう部分が8割だが、親が犯しがちな注意点なども具体例をあげて簡潔に示してある。国を超えて参考になる点もある。開明的で実用的な指南書となっている。

それでもこれがやはり今の中国で売れるだけあって「中国色」はかなりある。まず、作者紹介の部分だ。彼女が教育学の修士を持っている、という彼女自身の紹介は4行で終わっており、残り8行は「娘」のことだ。

彼女が成功裏に育て上げた娘は「学業・品性共に優れ、2回飛び級し、07年に16歳で大学統一試験を受験し、超高得点で名門大学に合格。成熟し、自立し、人を手助けし、北京市の「3好」学生の認定を受けた」とある。やっぱり今の親たちをひきつける理想のゴールはこれなんだよなあ。

絵に描いたような優等生の追及はどうにかならないものか?第一子供を自分の「作品」扱いするのには引っかかる。
理論より実践。実践とは娘そのもの、という中国的な説得力は確かにあるのだが、この辺のねじれたところが本日の北京なのである。