得するのは誰?再び尖閣

本日、日中間の摩擦はエスカレートしている。北京の日系企業が入る「発展ビル」の三井住友銀行とANAの看板にはシートがかけられ、大使館からは「周囲に注意し、大声で日本語でしゃべらないよう」というメールが届いた。

これって、日本の「国益」の多大なる損害ではないだろうか?勿論暴力的な行為に出る非文明的な中国人の行為は決して宜しくないし正当化されるものではない。一方で、どんな理由にせよ、結果として日本人がこんな状況に追いやられることは忌々しき事態だ。

損得だけでモノを言うのは私の主義と反するが、この世の中、人間の品性を軸とした「べき論」より「損得論」が偉そうにまかり通っている。今日は敢えて同じ言語で反対することにする。

喧嘩をするなら勝算があるときに限る。勝てない喧嘩はすべきではない。国有化というこぶしを振り上げた日本政府にいかなる勝算があるのか、きいてみたい。

損得といえば、商売だ。日本が今一番困っているのも経済不況。日本が好まなかろうが、中国は日本にとって昨年も引き続き貿易総額、輸出額、輸入額いずれも1位。日本にとってなくてはならないパートナーだ。好き嫌いでは済まないという現実に目覚めてこそ「国益」というものだ。

私のように北京で生活する日本人は勿論のこと、日本に居ても中国と何らかの関係を持つ人は非常に多いく、今回の動きは大損害だ。

一方、島といえば、直接私とは何の関係もない。人も住んでいない。人の生活は結局のところ人で決まる。

更に、今回の摩擦で日本の議論で完全に欠如しているのが、日本はかつて侵略したという歴史的要素だ。中国政府は歴史教育で人為的に日本への憎悪感を醸成し、日本人の贖罪意識を利用している、と言う指摘がある。しかし、重要なのは、このことによって、日本が「じゃ、全て忘れて良い」という等式にはならないことだ。

この「敏感な」問題に対して日本人はもっと謙虚に、敏感になるべきだろう。英・エコノミスト誌が「日本はアッケラカンと歴史を忘却している」と指摘しているがそれは正しい。

中国人から見れば近代列強がグレーだった島に勝手に看板を立てて持って行ったと映る。この歴史は彼らの中では自然に日本による侵略の過去と結び付く。

昔タクシーの運ちゃんと話をしていて、河北省の田舎のおじさんは日本人に切りつけられ、背中に傷があると聞いた。こういう生の体験を中国人は持っていることを日本人はあまりに軽視していないか。

利用される必要は毛頭ないが、これが日本のお隣さんだ。最大の経済パートナーで、過去に土足で家を荒らしたことがある。そして今は日本と違って国力は上り坂。引っ越しはできない、互いに逃げられない相手だ。こういう人との喧嘩はできるだけ避けたいし、やむを得ない場合も良く戦略を練ってから慎重に落とし所を作った上で進めてもらいたい。

混迷を深めるこの衝突で、北京の街中で大声で日本語が話せなくなったのは我慢したとしても、その分、日本の庶民全体が得したとはとても思えない。得したのは人々を煽って人気を取り戻した悪徳政治家や株価を上げている両国の軍事関係者だけじゃないだろうか?

これ、本日の北京なり