選挙報道その1 領土問題

さて、中国は安倍首相の誕生を領土問題に関してはどう伝えているか?

●新京報は直接の「主張」はなし。
日中関係については学者・陶短房氏の論評として日中関係が緊張し、右翼民族主義の声が高まる中で実施された選挙。右翼政党の維新の会が創立し活発な中、自民党もこうした潮流に迎合し、平和憲法の修正や国防軍建設、対中強硬路線などを提示した。しかし、世論調査によれば、国民の最大の関心は経済。自民党の伝統的路線――中国の民族感情を刺激せずに経済協力を強める路線に回帰せざるを得ないのではないか、と分析。

日中関係へに対しては大きな影響が生じるかは「まだ疑いが残る」と見出しを出し、平和憲法の改正や国防軍について触れ懸念は示しつつも、結論を避けた。

●人民日報系の国際関係紙・環球時報は「日中関係の悪化の原因は領土問題であるので、安倍が(前回の時のように)迅速に関係を改善する可能性は大きくない。その一方で野田首相の最悪の状況から更に日中関係が悪化し続ける選択肢は更に困難である。よって阿部政権は中国と共に事務的な対話を展開するのではないか」との分析を引用。

さらに、「安倍は2つの呪縛を抱えている。一つは日本社会の深刻な右傾化、民族主義の政治家への浸透。二つ目は中国の実力の上昇により、日本経済が中国の引きから離れられない点。安倍はおそらくこの中間で自己保存のためのバランスを取るだろう」と指摘。

最後に「非常に操作が難しい日中関係で成熟さを示してほしい」と期待を寄せた。

●21世紀経済報道は「日本の選挙候補者、対中政策を相互批判」と題し、民主党、自民党、維新の会は経済分野ではほとんどまとまっているため、対中政策が三者間の激論のテーマとなった、とする東京大学内山融准教授の分析を引用し、細かく3党の争点などを紹介した。

また、復旦大学日本研究センターの胡令遠副主任は「安倍は対中の立場はタカ派だが、実は伏線がある。安倍は親中派の高村正彦を副総裁に配置した。高村は日中友好議員連盟会長であり、こうした安倍の動きは自分のタカ派的な色合いを薄め、就任後に日中の難局から脱出をはかるためだ」との見方を示した。