北京の汚染はタバコにしたら1本分以下

今日は北京で一、二と言われる外国人向け(だった)病院、ユナイテッドホスピタルのドクターをたずねて、PM2.5について伺った。

このドクター何とコロンビア大学で文学を専攻しただけあり、筆が立つ。北京に来た外国人がいつも同じ質問をしてくるので、いっそのこと、と2年前ブログを立ち上げた。同じ質問と言うのは、食品安全と大気汚染だ。

彼のこの記事がどれも面白い。一方で医師としての科学的、客観的アプローチをしつつ、中国の現実も単なる傍観者としてではなく、半分ここの人として捉えているのが新しい。そう思うのはどうやら私だけでは無いようで、今やNYtimesのコラムの筆者になったというからすごい。

この先生曰く、北京でPM2.5が最悪の800位の日(めったにないが)でさえ、そのPM2.5の摂取量はたばこから摂取されるものの半分以下という。普通の日で計算すると、約6分の1本となるという。

米大使館のロック大使が「北京で生活しているのは毎日たばこを1パック吸っているのと同じ」と言ったのを聞いて、急いで電話して間違えを指摘したという。

晴れの日が4日しかなかったとい今年1月の状況について、患者さんには何か影響が出ていたか聞いた。

彼の答えは「思ったほどではなかった。」と言う。もともとぜんそく持ちや、咳が出ている人に影響がでたが、深刻なものは無かったと。

政府はどうするべきだと思いますかと聞くと、やっぱり車と工場の石炭燃焼・廃棄をどうにかするしかないのではと。毎年3%PM2.5を減らすというが、それでも20年かかる。

高性能な脱塵機械を義務付けたりして、一気に工場の排気基準を厳しくすれば、生産コストが上がり、工場は海外に逃げるだろう。

アメリカだってみんな車に乗っているし、中国の人だけ車に乗るべきでないとも言えないし。公共交通の整備は大切だけど。

むしろ視点を変えて今すぐできる体に良いこと、一定の投資で何を改善できるか、と考えると、大気汚染よりも、すぐにできることがある。例えば50%と言われる中国の喫煙率を下げる。喫煙によるPM2.5の吸引ははるかに高く、それが体に良くないことは証明されている。

また、中国で取り過ぎと言われている塩を減らすなどで、心臓病のリスクも減らせる。

PM2.5によるストレスの影響は大きい。ストレスは体全体の免疫が下げ、万病のもとだ。PM2.5から特に肺が成長過程の子供たちはマスクや空気清浄機で保護すべきだけど、PM2.5で思い込むのもどうか。

中国政府が今回PM2.5を公表したのは、もしかすると近年の同国の公共保健分野の最も大きな進歩かもしれない。この進歩は相応に評価されるべきだ。という。政府のデータを使ってこんな便利なHPもあると紹介してくれた。Beijing Air Pollution: Real-time Air Quality Index

今や、かつてのようにPM2.5の数値を得るのに米大使館のネットを見る必要は全くない。中国政府のデータの方が詳しい。全国70都市でのデータが示されている。北京なら15か所でデータを取っているから米大使館よりずっと正確だ。

ということで、全く新しい視点。
おかしい、問題は問題と指摘しつつ、中国の現状に根付いた視点から進歩は進歩と評価する。

外国人としての「普通」な視点を持ちながら、中国に対して全くの「傍観者」として口角泡を飛ばして評論するのではなく、半分中国に根拠地を置いて暮らす「当事者」としての視点も兼ね備える。こんな両方の「周辺」を重ね合わせられる視点が今、求められているのかもしれない。

こんな人も出てきている、これ、本日の北京なり。