大気汚染も結局はコストの問題?独占国有石油の悪態!

再び大気汚染だが、財新2月4日号ではPM2.5の元凶は独占企業の国営巨大石油会社だと糾弾している。良くまとまっていて読み応えありだ。(日本語版ありhttp://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130228/244325/?leaf_ra。)

大気汚染の原因を説明するデータは何種類かあるが、明らかに車からの排気ガスは石炭煤煙と並んで「最も重要な汚染減」であることは、既に示されている*1

さらに具体的には特にガソリンや軽油に含まれる硫黄とマンガンが汚染原因らしい。そこで北京ではPM2.5 を下げるために「京5」基準を導入。1キロ当たりの硫黄は10ミリグラム、マンガンは2ミリグラムに削減させた。

上海、広州、南京などの大都市では「国4」で硫黄は50ミリグラム以下、
その他大半の都市では「国3」で硫黄は150ミリグラム以下という基準が使用されている。

オクタン価は、アンチノッキング・燃費率を表し、日本ではレギュラーで92オクタン、ハイオクで100 オクタン。自動車メーカーも消費者も高いオクタン価を望み、値段もオクタン価に比例して高くなる。

ところが、このオクタン価を上げるために97年から使われてきた添加剤MMTを入れるとマンガン値が増えるため、PM2.5対策で使えなくなった。つまり、これまでのように安くオクタン価の高いガソリンが作れなくなったと国有石油大手の中国石油化工(シノペック)と中国石油天然気集団(CNPC)は主張しているらしい。

さらに、硫黄含有量の削減には、精油段階で水素を加える装置の導入が必要となり、コストがかさむ。

こうした事情から、昨年12月に国5のガソリン基準制定の石油標準委員会*2が草案を審議した際も、シノペックとCNPCは硫黄・マンガン含有量を減らすなら、オクタン価も引き下げるよう主張。

結局、(京5に準ずる)国5はオクタン価を97号→95号へ、
国4は93号→92号へ
国3は90号→89号へ引き下げる事となった。

つまり、京5導入によるガソリンの品質アップに伴って生じたコストは、オクタン価の低下による燃費の低下と言う形で、消費者が負ったことになる。

国5の基準づくりも主導権を握っているのは石油化学業界。国5を審議している37人の石油標準委員会のうち、
7割以上が石油化学業界の代表、
自動車業界は3人
環境保護関連は2人
消費者代表は0!という。

その上、石油標準委員会の主任委員も、事務局もすべてシノペック。
石油製品基準はシノペックの下部組織の石油化工科学研究所が主導で起草する。

原因も分かっている。技術もある。カネもある。ならさっさとやればいいのに、「もっと儲けたい」という独占企業の思惑がそれを阻止しているとは。

こうなると、やはり国・政府全体のガバナンスの問題だ。市民よこれでいいのか!
これ、本日の北京なり。

*1:1国際環境交通会議ICCTのマイケル・ウォルシュ前議長曰く、北京、上海、珠江デルタの排ガスはPM2.5全体の22〜34%をしめると指摘。北京市環境保護局の大気汚染担当者は今回の霧の原因は、車が22.2%、石炭燃料が16.7%、埃が16.3%、工業排気が15.7%と説明している。1月30日「21世紀経済報道」

*2:正式名称は全国石油・潤滑剤標準化技術委員会