運転手談義その2「チェック無しだから政府はやりたい放題なのさ」

エッセイで中国を見る時に中国人の時間軸(縦)からの視点と日本からの二国間比較の横の視点があると書いた。全く違った中国の読解基準が双方にあるということだ。

中国の過去を経験していない私には中国人の感じ方は想像するしかないが、なるべく想像力を豊かにして彼らの感覚を理解したいと思っている。一方で善悪については中国の厳しい状況の中でも麻痺させてはいけないと思う。日本からの横の視線はそれはそれできちんと堅持しないと流されてしまうからだ。

この距離感が難しいのだが、今日はヒントになるこんなドライバーの話をしよう。「外国が中国に人権などについて文句を言ってくることで自分はその恩恵に与っている」という。良くないことには断固して声を挙げ中国内部の改善を求めることはやはり大切だ。

前回のボロサンタナおじさんはネットで世の中が随分透明に良くなったと前向きだった。私の中国社会暗黒批判にも、「昔よりまし」「他の途上国も似たり寄ったりなのでは?」と冷静だったが、この50すぎの明るく健康的な運転手は歯に衣着せずはっきり一党独裁を批判。実は運転手の多くは大体政府に批判的でビシバシと文句をいうものだが、この人は単なる文句でない点が面白い。以下彼の言葉だ。

文革中はお爺さんが地主だったためひどい扱いを受けた。
79年の訒小平の登場に感謝している。もし毛沢東があと10年生きていたら自分は死んでいただろう。当時アメリカ黒人はどんなに差別を受けているかという話を聞かされたが、自分が文革中に受けた差別はそれ以上だった。遅れていた。

それに比べ今は天地の差がある。発展した。とても満足だ。お金は食べていけるだけあればいい、十分だ。

でも日本などに比べると遅れているところはいっぱいある。一党独裁だからだ。政府への監視がないからやりたい放題だ。政府は本当に「黒い(悪い、暗黒だ)」

昔と比べると天と地の差がある、進歩したという。前回の運転手さんと同じ視点だ。これが外国人の私たちにはどうしても肌で感じられない感覚だ。「満足」とまでこの運ちゃんは言っているが、一方で現在の問題点への批判は実に的確だ。彼の話は次に外国メディアの役割に及ぶ。続きはまた明日。