誰が陳ばあさんを英雄にした?
中国でも最近は変な裁判社会になってきて、道端で転んだり、困っている人を善意で助けた方が「不当(や悪意の)処置だった」と訴えられるケースが出てきている。やくざ顔負けのプロの当たり屋の老人や身体障害者もいるから性質が悪い。
その結果、最近は老人が道で転んでも誰も知らんぷりという類のニュースが後を絶たない。
「中国人の道徳観はどこへ行ってしまったのか?」かという自責の議論が毎回でる。
昨日から報道されている今回のは魯迅に出てくるような陳ばあさんが登場する。
市場で遊ばせていた2歳4カ月の悦悦ちゃんが市場を行き来するトラックに前後7分間、2回もひかれて致命傷を負った。問題なのは18人もの人がその間、前を行き来していたのに見て見ぬふりをしていたのだ。最後に駆け付けたのは市場で炊事やゴミ拾いをしている58歳の陳ばあさんだった。
この一部始終が防犯カメラに映っていた。
今日の新聞にはこの陳ばあさんのインタビューがある。
おばあさん曰く「遠くに子供が倒れているようだったので駆け寄ってみた。自分は当たり前のことをしただけ。」
10年前のこと。このおばあさんはゴミ拾いをしていて靴箱の中から10万元(125万円)の大金を拾ったことがある。しかし彼女はあっさり「警察に届ける」と申し出た他の清掃員に引き渡し、それっきりそのことを尋ねたこともない。
「どっちみち、あれは私のモノではないのは知っているから、もらうわけにはいかない」と陳ばあさんは言う。
時代の底辺でギリギリでありながら「ふつう」のことをして生きている陳ばあさん。
「おかしい」と皆思っているからこそ陳ばあさんが英雄として取り上げられるのだが、
それにしても「ふつうの人」の世界はどこに行ってしまったのだろうか?