巨大像を建てる「ゴンゴ・GoNGO」と中国の「公益」

Gongo・ゴンゴという言葉をご存じだろうか?

これは中国の政府系NGOをさす言葉で、政府の息がかかっていない草の根のNGOと区別するために出来た言葉だ。政府から事業費をもらう代わりに人事は握られているのが一般的だ。

中国で有力NGOといえば今でも中国婦人連合会や全国労働総工会などのGONGOが中心。本当のNGOは法的に登録することも難しく、頑張っているがまだまだ大変だ。今回問題になった宋慶齢基金会も規模は小さめだがGONGOの一つだ。本当のNGOからすると、またNGOを汚す迷惑な出来事が起きた。

河南省宋慶齢基金会は、彼らの年間公益事業費の3倍以上に当たる4億元を投じて突飛な青年活動センターを建設した。センターのメインは高さ24メートル、ビルにして8階にもなる巨大宋慶齢像。800平方メートルにもなる台座部分は600人収容の大会議場となり、その横に作られる4棟の6階建て建物は3D映画館になる予定という。どこの遊園地か、と言わんばかりの大規模プロジェクトで、NGOの公益モノとは程遠い。因みにどう見ても宋慶齢なのだが、基金会は沸き起こる批判をかわそうと急遽この像は「黄河の娘」だと言い出した。

この河南省(きな臭いニュース多発省)の宋慶齢基金会は最近投資会社を設立し、バシバシ不動産開発にも手を出し、自己資金を30億元までふくらましたという。農村医療プロジェクトでも農民に高利で預金を募っていたというから、かなりお金の匂いに敏感な組織のようだ。

私も実は去年宋慶齢基金会と公益プロジェクトを協力する話があったのだが、どうもきな臭い。彼らの「ブランド」を使って公益プロジェクトをさせてもらう代わりにスポンサーを呼んでこいという。勿論「管理費」を上納しなくてはならない。プロジェクト規模も品質を重視した小規模ではなく、大きくやれと言われて結局断った。

中国では経済発展とともに、四川大地震も契機となって08年以降、「企業の社会的責任」が注目を浴び、公益事業が爆発的に生まれた。

昨日公表された中国社会科学院の「企業の社会的責任報告書」によると調査した300社のうち、トップは中国国営企業の中国遠洋集団、ビリはアディダス(中国)だった。日本の三菱商事(中国)もコカコーラと並んでビリから3位に評価されている。社会科学院たるもの何の「公益性」を調べているのか、まったくインチキなCSR調査だ。

そうそう、鄭州に立ち寄ったら、新名物の「黄河の娘」見学をお忘れなく。
中国の「公益」事情に思い耽る絶好のチャンスとなること請け合いだ。