PM2.5の快挙

また、中国のスピード展開が起きた。

10月末から北京では濃霧が発生し太陽が見えない日々が2週間続いた。アメリカ大使館は「危険な重度の汚染」といい、北京市環境局は「軽微の汚染」という。よくよく聞いてみると、前者はPM2.5を基準には計測。後者は粒子の大きいPM10を基準にしているからだという。

市民は、それならなぜ中国でも細かい粒子のデータを観測して公表しないのか?と議論が巻き起こった。昨日の時点では「南京の熱心な気象局職員がPM2.5のデータを公開してしまったが、公式ではない」なんて言って削除していたのに、今朝の新聞(新京報、京華報各紙)には

「遂に北京など大都市の空気の観測基準争議に結果が出た。環境省は16日、2016年までに『環境空気質量基準』にPM2.5を組み込む方針を公開意見案で通知した」

とある。数週間前まで「軽微な汚染」にすぎないと白を切って、むしろアメリカ大使館のデータにいちゃもんをつけていた政府の態度は一夜で180度変わったことになる。いつもの政府の傲慢な態度にネットでは市民の反感が広まっていた。状況有利にあらずと判断するとこちらの政府は次の手を打つのもものすごく速い。

このスピード感は中国に居ないと分からない。日本にはない社会の動きだ。

とりあえず、良かったと小さな達成感を感じているのは、私だけではないだろう。

この一連の動きで特筆したいのが、アメリカ大使館の役割だ。

民間の外国人が空気観測をやれば「違法行為」で逮捕されるところ、観測を開始し、ブログで公表した。中国から圧力もあったはずだし、政治的なリスクもあっただろう。しかし、「汚いものは汚い、危険だ!」と毅然とデータを発信。

この情報が中国の微波を通して濃霧で太陽の見えない日が続く都市の市民を動かし、中国の政策をあっという間に動かしたことになる。

外国人だからこそできる変化への「支援」というのは、きっとこういうことだろう。中国国内の人はいろんな圧力でやりにくいことを一歩先に実施する。リスクを背負って毅然とした態度で主張すべきことは主張する。

良い援助、外国人の役割についても考えさせられるPM2.5であった。