コーヒーショップ空間

◆私はコーヒーも好きだが、それ以上にコーヒーショップの空間が大好き
だ。1996年に北京に降り立った時、一番飢えたのもコーヒーショップだ。
そのころの中国はネスレのインスタントコーヒーがまだ目新しく、フレッシュ
コーヒーを出す店が出現する日ははるかかなたに思えた。

◆ところが時代は一変し、今や北京の至る所にスタバをはじめ世界のコーヒーチェーンがあふ
れている。最近、私はモールの一角にある英国系チェーンのコスタ・コーヒーを利用する。ラー
メン2杯分に相当するコーヒーは決して安くはないが、昼下がりともなると連日ほぼ満席とな
る。商談、勉強、おしゃべりにいそしむ人々で店内はいつも妙な熱気に包まれている。

◆北京では、貧しい禁欲的な時代が続き、嗜好(しこう)品を飲んで楽しむという「ブルジョア
的習慣」はほとんど消えうせてしまった。今の北京のコーヒーショップのにぎわいはまさに、「ブルジョア」再出現の証しなのかもしれない。中国の若い人も、おしゃれで自由なプライベート空間を求めている。ちょうどネット上では「微博」(マイクロブログ)が「非共産党空間」ゆえに人々の人気を博しているように。コーヒーの香りは新しい市民の香り。この国のコーヒーショップの隆盛と市民の目覚めはもう誰にも止められそうにない。