貴陽市民のオアシス 黔霊公園

貴州ホテル(4つ星)の若いドアマンの御兄さんに勧められてきたのがこの黔霊公園。徒歩約30分。合計5,6車線の香港を思い起こす真直ぐの道路沿いを歩いて20分、右に曲がると急にそれまでの埃っぽい道路わきの空気とガラッと変わって縁日のような休日の雰囲気が漂う。これが公園入り口に続く道だ。

両側には貴陽名物の恋愛豆腐、WAWA糸、豚足角煮などを売る店が所せましと並んでいる。他にも、かごに取れたての蕨や山菜をうるおばあさん、野生の小さめのサクランボ、北京の半分以下の小ささの琵琶やミニトマトをうる人も地べたにそわって店を広げている。

ここでは時間がゆっくりと流れる。店の人も何となく穏やかだ。

公園の入場料5元を払ってゆったりとした坂道を登っていくと池が見え、ついさっきまで高速道路を思わす都会の道路沿いを歩いてきたことが嘘だったようにさえ思える。貴陽の裏庭と呼ばれるここは、一歩入るとその森深さに驚かされる。

公園と言うより、「黔霊山」というのが正確で、敷地はとても大きい。ほとんどミニ高尾山くらいで、じっくり一日かけて楽しめるスケールだ。ゴンドラで山頂に上がれば貴陽の街を一望できる。

また、山頂にある弘福寺では、指折りの精進料理が食べられるので、昼時(11時より)に居合わせたら、是非毎日数量限定の「やわらか豆腐ご飯(豆花飯)」や秘法レシピで作られる「鴻福寺la椒(鴻福寺トウガラシ)をトライしたい。欲望を忘れるためのお寺料理のはずなのに、これがまたおいしい。

もうひとつこの公園で逃したくないのが、猿だ。弘福寺近くに特に多いが園内全体におり、餌付けして半野生の状態なので真近に見られ、餌をやると食べにくる。一般に温和で攻撃することは無いが、たまにいたずらをすることもあるそうなので、所持品には注意が必要だ。

こうした公園の名所巡りと同じくらいお勧めなのは自由に自分の時間と深い緑を謳歌する市民を眺めながらする公園散歩だ。こちらは、園の入り口から15分くらいのなだらかな坂をゆっくり歩く短いコース。

公園には趣味で中国楽器を演奏する人、それに合わせて歌を歌う人、民族衣装姿で踊る人、それを取り囲んで眺める人、鞭でピシリぱしりと何をしているのかとおもったら力いっぱいコマを回しているおじさん。古風な女性らしい踊りを合わせて踊る若い女性たち、麻雀に夢中になるおじさん、おばさん、などなど皆それぞれの楽しみ方をしているのを眺めるのも面白い。

北京の北海公園なども休日の趣があってよいが、こちらは貴陽の南国に近いゆったりさ、おおらかさ、そして北京では10年くらい前に消えてしまった牧歌的な雰囲気がある。貴陽で時間があまったら、是非のぞいてみたい活きた市民の香りに溢れるスポットである。