脱「体制」の風

最近中国で人気を博しているものはどれも脱「体制」、脱「主旋律」だ。中国で「主旋律」というと、共産党のプロパガンダ色どっぷりの芸能表現のこと。庶民の娯楽などはとっくの昔からこれとは決別しているが、ドキュメント界では未踏破だった。

そんな中、食を巡る人々のドキュメント「舌の上の中国」はパイオニア的存在となった。夜中10時半の放映時間からも分かるように全く期待されていなかったが、ドキュメント史上最高の視聴率を記録し大ヒットと化けた。人気の秘密はBBCをお手本にした、政治色を排除した真面目で芸術的な作品づくりだ。

体育界でも脱体制は進む。金メダリストのこれまでのお決まりの一言は、「国に感謝、体育協会に感謝」だったが、最近は違う。昨年フレンチオープンで優勝した李ナ選手は「先ず、旦那にありがとうを言いたい」と言い放ち、中国にも新時代がやってきたことを期せずして物語った。

宇宙開発では、まだ体制感謝だが、宇宙飛行士がロケット内の様子をビデオ撮影しているときにクルリと回して自分の笑顔を撮ると「さすが80年代生まれ、ちゃめっけがあって明るい」と実況放送のアナウンサー。人々の「良いもの」や人間らしさを求める流れは誰も止められない。これ本日の北京なり。