親中、反中、「売国奴」、「愛国」の2極論を超えて=読売新聞北京支局長のつぶやき

今日、友人から読売新聞の加藤・北京支局長著「『反日』中国の真実」(講談社新書)を借りてきた。

この中で、筆者は、今の日本の中国報道(それはそのまま、鏡のように中国の日本報道にも当てはまるのだが)を支配する「2分化極論」を鋭く指摘している。

「中国に批判的なことを言うと「反中」とされ、理解を示すと「親中」と区分される、これは百害あって一利なし。。。理解が無ければ批判をする資格がなく、批判を経ていない理解は浅薄だ。」
(まえがき)

さらに「中国を悪く書けば売れる」時代の報道責任 との小見出しで(P253)
…強国化の道を突き進む中国を横目で見ながら(政治の不安定、経済の停滞、災害などで)日本人が焦燥感を持っていることが指摘できる。・・・(かつての援助の対象だった中国が)GDPで日本を追い越し、経済力を武器に対日制裁まで行っている。そこに好感を抱かないのは理解できる。だが、フラストレーションを吐き出すだけの「反中」言論は、かつて戦争で歩んできた道のりの繰り返しであり、国民を自殺行為に導く。」

と指摘。全く同感だ。背後にある民族感情を市場とした商業主義を良いことに、「悪く書いて売ろう」という風潮がこのところ強すぎる。

これは、却って日本に本当の中国を伝えず、間違った中国像を形成し、まさに「自殺行為」である。彼を知り己を知り、という原則で言えば、「兵法上」から見ても原則的な過ちとなる。

彼は、世界大戦前の歴史まで遡って中国の近代化と愛国、対日関係、対日感情などを探っていて非常に示唆深い。

それにしても、2極論に陥ってはいけない、と第一線のトップクラスのジャーナリストが叫ばなくてはならないというのが本日の北京である。