用語の独り歩き「PM2.5」で思う

用語は良く分からないと独り歩きを始める。一般に人は自分の知らない言葉に弱い。

例えば、「消炎剤入りの風邪薬、新発売!」と言っても新鮮味がないから「塩化リゾチーム配合総合感冒薬」とすると、薬学の知識ゼロの筆者などぐっと効きそうな妄想を抱いてしまう。「塩化チゾチーム」が一体どれほどありがたい物なのか知らないが故に、何だかすごいにちがいないと勘違いしてしまうのだ。これぞ、良く分からない用語が持つ魔力だ。

今年の流行り語と言えば「PM2.5」。PM2.5って何?と言われても、お決まりの「粒径2.5μm以下の超微粒子状物質」とは答えられても、もっと分りやすく言える人はほとんどいないだろう。PM2.5と中国の汚染は結びつき、「PM2.5 中国から飛来」とか、ひどいのになると「中国は日本に謝れ」などと報道しているのを聞くと、あたかもPM2.5は中国の大気汚染特有の毒素のようにさえ聞こえる。

PM2.5は超微粒子の総称で、タバコ1本には北京市の平均的汚染の6倍のPM2.5が含まれている。さらに一説には700種類の発がん性物資も一緒に摂取されるとか。喫煙OKの居酒屋などではPM2.5の濃度は500を超えるという程、実は日本の日常でもお馴染みの代物なのだ。タバコを吸いながら、PM2.5予防にマスクをすること程ばかげた行為もない。

タバコは棚の上に挙げて、中国からのPM2.5を大きく書き立てる報道は何か焦点がヘンだ。日本から来た大御所外交専門家曰く「今の日本には人の禍を喜ぶような節があるが、それは人として品がない」と指摘。深く頷いた。日中の政治がぎくしゃくするからと言って、個々の品格まで下げることは無いだろう。PM2.5をめぐる日本の空気は、北京のスモッグ同様濁っており、将来の健康への害が心配だ。