「日本の立ち位置を考える」本を読んで

2カ月もサボってしまったが、読書の秋、久々にピリリと知的刺激のある本を読んだ、明石康編の「日本の立ち位置を考える」(岩波、9月)だ。

これは去年9月から今年初めにかけて開かれた日、米、中、韓、シンガポールの学者が参加して行われた国際シンポジウムの議論をまとめたもので、英語題はズバリ Japan in the worldである。

この視点こそ今の日本で決定的に欠けている視点ではないだろうか。日中、日韓、日米と二国間関係だけを取り上げて様々な感情的呪縛のなかで各国との関係を捉えることに限界が来ている。

典型が「中国や韓国と仲良くする必要はない」などと言う短絡的な結論だ。(領土問題で緊張が長引く可能性は高いが、それとこれは別)

この本の素晴らしいところは、英語の世界をベースとした(すなわちグローバルな視点から)日本は今どのような状況にあり、世界はどう変わり、今後どうしたら良いのか、ということを頭脳明晰な専門家たちが分りやすく提示し議論している点だ。

まず、世界はどうなっているか?エズラボーゲル氏はズバリ「アメリカの世紀は終焉を迎えている」、「米国は国際問題を解決するために中国との連携を強める必要に迫られる。」「米国は中国と協力的な態度をとっていかなくてはらない、長期的には日本も同じ。日米共に日米同盟にばかり集中しない方が良い。」

と言っている。日本が世界的な視点から見てどうなのか?そのことをきちんと明晰に分析しているこの本、実に示唆に富んでいる。

「奇妙な不機嫌に支配されている」「日本に残された時間はそれほど多くない」との指摘はズシリとくる。

是非、メディア関係者や学者は勿論多くの人と共有したい本だ。