世代間ギャップで迫られる嘘

世界でも稀に見る速さで世の中が変わった中国では、世代間ギャップも世界最大級だ。

70,80歳代の飢えの時代も生きて、文革中のパージや集団リンチも逃れて子育てをして苦労をしてきた世代の人は水一滴に至る倹約家が多い。

その息子や娘たちは改革開放後の90年代の経済成長にうまく乗った人も多く、今や5000元のIPHONEを使い景気の良い人も少なくない。

両者の金銭感覚は天と地の差だ。このギャップを埋めるのは相当大変である。そこで必要とされるのが、嘘である。

昨日おしゃべりしたタクシーの運転手。娘はもう30歳になるという。母親は70過ぎで、兄貴一家と暮らしている。兄貴は羽振りが良いらしく、iphone4の発売当時5000元で買って、このおばあちゃんにあげたらしい。5000元(=8万2000円)とはこの私でも相当考えてしまう高額だ。こんな真実の値段は日々1角の節約に努めている母親には言えないので、当然のことながら「いくら?」と尋ねた母親に、「な〜に、高くはないよ、数100元だよ、気にしないで使って。」と嘘をついて渡したという。

すると、その後、すっかりそれを信じた母親は、周りにそう言ったという。すると「それじゃ、僕が2000元で買い取るから売ってくれ」と頼まれたと言う。数100元で買ったと思い込んでいるお母さんは喜んでこの5000元以上する高級なiphoneをこの人に2000元で売ってしまった。

それでも、感心するのは、この運ちゃんの兄も運転手さん自身も決して本当の事を母親に言わなかったという。お母さんを心配させたり、やきもきさせたくなかったのだ。

ん〜何でせっかくのギフトを売っちゃったの?と私は言いたいが、その言葉を決して口にしなかった運ちゃん一家はやさしい一家である。

これ、本日の北京なり。