四川の情熱

クリスマスの前の週に突然10年来の四川省でNGOを主催している友人からその週末に10周年記念パーティーをやるから是非来いと連絡があった。ホテルはとってあるから飛行機だけ予約して来てという。旅費は全て向こう持ちだ。せっかく来るのだから、成都でゆっくりして好きな時に帰ればいいとも言うではないか。

これは全く中国式だ。第一いつも突然やってくる。そして適当〜。さらに太っ腹である。

彼らに愛着を感じていることもあるし、最近ひとりで出張していないこともあり無性に行きたくなり、ひとつ返事で行くことに決めた。

彼らは元々政府機関で貧困対策をしていた優秀な人材で、世銀やフォードなどのプロジェクトをしながら自分でNGOを設立。JICAのプロジェクトでも参加型の農村開発で協力してくれたことがある。

常に腰が低く、目立とうとせず、農民の視点から地味に真面目にことを進めようとする中国の良心のような人々だ。

それでも、中国だから、さっきの電話の通り、極めて実践・実際的で太っ腹、細かいことをいちいち言わず物事を進めるのも早い。

というご縁で私は久々に成都に行った。週末に家族をおいての楽しい出張という負い目もあり、必ず四川ソーセージをお土産に買おうと最初から決めていた。

この四川ソーセージはすごい。西にチョリソーありなら、東に四川ソーセージあり。西にパルマハムありなら、東に四川ベーコンあり、である。とにかくビリビリとくる中国山椒と真っ赤な唐辛子でまさにロックンロールな味わいだ。ビールにぴったりなのは言うまでもないが、これは意外にもワインとも合い、実にクセになる美味しい食べ物なのだ。

食べたことのない人はチョリソーや生ハムが分厚くスライスされてお皿いっぱいに並べられた時の幸福感を想像してもらえば、わかってもらえるだろう。

中国に美味しいものは多いが、その中でも私にとって四川ソーセージは1,2位を争うトップレベルの美味しさだ。

そのNGOの記念パーティで四川省政府で働く若い30そこそこの青年と出会った。彼に私の四川ソーセージへの傾倒ぶりを語ったところ、期せずして彼の琴線と交差した。

中国の人は行動に移すのが至極早いが彼も例外ではなく、こう言う。「そんなに四川ソーセージがうまいか。それじゃ、僕の実家のやソーセージで有名なXXのソーセージを今度送るよ。」という。勿論お酒の席で「ぜひぜひ!」といったが、北京に戻った年末の午後、ソーセージを送るから住所を教えてとメッセージが届いた。

そして、今朝四川省から丸4日かけて我が家に箱いっぱいの真っ赤な四川ソーセージが到着した。芭県、茂県、成都市とシールが貼られて、使い古しのスーパーの袋に入れられて届いた。ソーセージは詰めて間もないようで、まだ柔らかい。急いで日陰の窓際に吊るした。

ソーセージの火の付くようなロックな味わいに通ずる四川人の情熱を感じた。その情熱はきっと自分の故郷の味を愛する情熱で、四川を愛する情熱で、また生きていく事への情熱かもしれない。

来週は3種類のソーセージの食べ比べをしてその結果を彼に報告しなくてはならない。我が家にはいま、四川のソーセージの辛さと情熱が充満している。

これ、本日の北京なり。