親孝行のための嘘の数々

中国の今を生きる4,50代の人とその親とのジェネレーションギャップはおそらく世界でも最大だろう。勿論、中国社会が世界でも前代未聞の速度で変化したためだ。

日本で例えるならおそらく明治生まれのおばあちゃんと今の若者と同じくらいの世代間ギャップになるんじゃないかな?

最近70,80代の革命、戦争、飢え、文革を生き抜いてきたおじいさんおばあさんに話を聞いている。彼らは本当に私の想像が全く及ばない筆舌に尽くせない苦労をして生きてきている。一人一人の人生がドラマだ。

そんな彼らは豊かになった今でも水一滴にこだわる倹約家が多い。

ちょっと極端な例ではあるが、私の知る70代後半のおばあさんはまさにそんな倹約癖の代表例だ。

もともと庶民が食べる一番安い食べ物であるラオ餅。1斤1.5元というのはかなり安い。これを1斤食べればお腹いっぱいになる。しかし、これが2角安売りになると、このおばあさんは2時間スーパーに並んだという。この努力はすごい。

水のリサイクル使用も半端じゃない。たらいいっぱいの水もまずは米、次野菜、次茶碗洗い、次床拭き、次トイレと3,4回は使う。この家では、ジャージャー放水しながらお皿だけを洗うなんてもってのほかだ。

労を厭わない勤勉さは本当に苦労して叩き上げてきた彼女の人生が見え隠れする。(怠け者のの私には到底無理だ)

そんな節約大王の子供はというと、こちらは私たちと大して変わらない感覚で毎日生活している。当然この母親とはギャップが生まれる。どうするか?嘘をつくしかない。

どうして僕はいつも嘘をつかなきゃいけないんだ?と悲鳴をあげる友人はこんな母親に対していつもやむを得ず、嘘をついている。

例えば、30時間の長距離列車しか乗らない母親を飛行機にのせようとしたときは、航空券はマイレージで交換してタダでもらったと嘘をついた。早く使わないと無効になると言うと、母親は断じて自分は使わないという。それだけじゃない。そんな無料航空券なら使わない手はないと、周囲の人間に里帰りを勧め始めたという。友人は大慌てで母親の知人に手を売ったと笑って話した。

冷蔵庫を買うときも嘘をついた。知り合いが冷蔵庫を売っているから安く手に入る、値段は気にしなくていいと。

さらに、最近乗ったタクシーの運ちゃんも同じような嘘をついてドツボにはまったという。運転手の兄貴は羽振りがよく同居している70すぎの母親に5000元もするiphoneをプレゼントした。勿論嘘をついて数百元だよ、気にしないで使ってと渡したところ、おばあちゃんは周りの人に数百元だったと語ったという。すると、それなら、僕は2000元出すから譲ってくれと言われ、おばあちゃんは売ってしまったという。

関心するのはそれでもその家族の誰ひとりも不満も言わず、決してその嘘を明かさずにいたということだ。この辺が実に中国らしい。

倹約家の親に楽させたい一心で今日も中国中で多くの嘘が生まれているに違いない。