親の不満爆発、中国の教育の現状と改革への市民からの圧力

昨日の続きだが、中国で20年近くも現状の教育の問題点が指摘されながらなかなか進まなかったのに、近年になって実際に改善が見れるようになったのはなぜか、改革を推進している現実の力とは何か?と聞いた。

一番わかりやすいのは労働市場のミスマッチという経済的な理由だ。朱鎔基時代に大学の門戸を増やした(これもある意味で社会安定のための政治的判断でありまた内需拡大で教育産業振興を目指す経済的判断でもあったと。)ところが大学を卒業してもテストバカばかりで、中国の産業のアップグレードのために必要とされる技術革新の担い手が生まれない。また、工場で必要とされる技術者もいないという産業上のニーズに応えるためにもっと教育全体を改革する必要がでてきた。

そして、グローバル化の影響もあるだろう。どんどん中国の有名大学の卒業生は欧米のトップ大学に行く。大学間の壁はどんどん低くなっており、中国だけが突飛な教育をしているわけにはいかなくなってきている。

しかし、最も大きな理由は親の不満が限界に達しているという点だ、と専門家は指摘する。親が変わったことによる改革への影響は私もかつてより感じていたが、専門家はこれが一番大きい要因というので、これは同志を得たりという思いだった。

彼曰く、3月の全人代で最も批判にさらされるのは毎年教育問題だという。貧しくて選択肢のなかった時代は終わり、親は子供にまっとうな教育をする「教育の権利」に目覚めているという。この不満は全国の各家庭に津々浦々で存在し、中国の安定を脅かすほどのマグマになりつつあると。だから政府としても「市民が満足する教育を!」という一番わかりやすくまた正しいキャッチフレーズを打ち出しているという。市民は全く満足していないのだ。

今、中国にとって最も必要なのは安定を保つこと。教育の遅れはそれを脅かしているために、政府は気合を入れて真面目に改革に取り組む必要を感じているのだ、と。

この指摘は実に説得力があり、また重要だと思う。
これ、本日の中国教育改革の舞台裏なり。