知日について考える

最近中国のオシャレな日本情報誌「知日」を紹介する日本版が出版され、あらためてこの雑誌を読み、この編集長に会ってきた。

オフィスは賑やかなショッピングモールから遠くないが裏手は露天商がそのまま道に住んで洗濯物を干している通り。新築の怪しいような新しいようなビルの中の一室だ。

これも昨日引っ越してきたばかりという感じだ。部屋に入っても従業員はこちらが話しかけたら対応するが、しなければ知らないという冷めた感じ。編集長は時間ちょうどに現れ小さな彼の部屋でおしゃべりした。

知日日本語版にすでに彼へのインタビューが載っており、それを見てすごく驚いた。まず、若い。たった33歳である。どっかのお金持ちの息子でも権力者の息子でなもない、ごく普通の湖南省出身で北京で大学時代を送った青年だ。卒業前はアングラ映画を友人と撮っていてそのおこずかい稼ぎとして編集・企画の仕事をしはじめたという。映画関係の仕事につき、偶然に本の編集をさせられたら大当たりでミリオンセラー書となったという。

そこで自信をつけて、会社を辞めてそのミリオンセラーの装幀をしてくれた友人と独立。そして作ったのがこの雑誌だ。

雑誌は実にユニークで、まずデザインが秀逸。日本のブックデザインの巨匠の弟子に影響をうけたという31歳のアートディレクターの才能が光る。正直最初はこれが100%メードインチャイナ、とは信じられなかった。

次に本として登録しているので、広告がない。テーマを一つ選んでそれにちなんでいろんな角度から掘っていくという手法を取っている。テーマは断捨離だったり、明治維新だったり、猫だったり、漫画や日本食だったり、日本人に礼儀を習おう、だったりする。

社会史的な手法だ。例えば「日本人に礼儀を習おう」特集だと日本のビジネスでの名刺の渡し方から、服装、礼状の書き方などの実用・実際の情報から、戦後すぐ女性の立場が180度変わった時の女性の躾はどうあるべきかを示した宮本百合子のエッセイだったり、と無限大に広がる。

日本のコンテンツのwhat&whyそれが面白いのかに絞っていろいろ聞いた。答えは流行、芸術的なもの、かっこいい物であり、またライフスタイルそのもの、更にはその背後にある日本人の生真面目で究極を求める態度や哲学でもある。なぜ日本なのかという点では、やはり中国にとって東西の交差点の日本で一度消化されている西欧文化は手っ取り早く吸収できるからのようだ。日本には西欧にあるものは何でもあると。

一番端的に彼が言ってなるほどと思ったのは、中国でアート関係をする人間にとって、日本は大きな石であって、絶対に無視しては通れないものなんだとか。きれいなもの、新しいものを追及していくと必ず日本にぶち当たるらしい。自分もセンスの良いものを求めていたら気が付いたら日本のモノばかりだったという。

勿論日本人にすれば、日本のデザインは中国以上かもしれないけど、もっとヨーロッパのはさすが、と思うものがある。でも中国の人は別の視点があるみたい。

この話を先輩の日本の記者にしたら、彼曰く、最近の日本礼賛には違和感を感じるという。中国がほめた、日本はやっぱりすごい、と気を良くしているだけではだめ、という。これをチャンスにもっと良くしていこうとしない限り、中国にあと10年で抜かされかねないと。

確かに。マッサージしてもらって喜んでいるだけではなく、主体的にそれを活かしていかないと。やっぱ日本ってすごい、で終わらせたくない。

これ、知日をきっかけに本日の北京で考えたこと。