中国の曖昧な受験制度

最近のキャッチフレーズは神戸大学の加藤先生の「曖昧な制度」だ。
今日は中国での小学校、中学入試の会があって行ってきた。一番曖昧で手ごわいのが中学受験という。

確かに。はっきり言ってルールが全く分からない。
そして、毎年変わる。何がどう変わるかも直前まで公開されない。

ご丁寧にまとめてくれた人が居るので、それを参考に整理すると、中国の中学進学・受験は主に4種類の道がある。

1)公立名門への学校選択(『択校』):これはいわゆる各名門中学が独自の基準・テストで生徒を取る枠。但し、青田刈りなどもあり、小学4年生くらいに合格して転校する子もいる。とにかく中学直営の私塾に行き、受験権を獲得すべく数学オリンピックやケンブリッジ英語5級などをこなす。表向きは禁止されているが、まだあるらしい。

2)公立名門への特技入試:芸術、体育、科学分野での受賞歴などを競う。知人はバイオリンやチェロなどのコンクールで北京市1位をとったらしいが、それでも、まだ受かるかは不明とか。毎年減少していて今は全体の15%位。でも、この枠で合格したら、その特技を在校中は発揮し続けないといけない。(クラブ参加が必須)

3)私立受験:北京では清華や人民大学附属などの公立の方がレベルが高いので、その次のまずまずの私立を受験すること。

ここまでが生徒が自分で選んで応募するもの。そのほかに天に運命を任せてどこかの公立中学へ進む場合はコンピューター振り分けという枠がある。

4)1回目振り分け:3好学生という勉学好、道徳好、体育好(だったかな)を持っている優等生で内申が良い子。全体の5〜10%。まず、これに選ばれるかどうか分からない。選ばれて応募しても、自分の行きたい志望校3つのリストを提出するが、どこに決まるかは分からない。
2回目振り分け:普通の学生が志望校を書いて提出。振り分けられる学校はピンキリ。
これら全てが決まるのが7月初め。


ということになる。例えば、特技でも今年はどの特技でどの学校が何人募集するか、とか、3好学生など優等生を務めあげても、『推優』資格を学校がくれるかは最後までわからない。もらえた後も、希望は出せるが、実際どこに行けと言われるかは運命。

ということで、私の知人もすごく優秀な女の子を学校選択で受験させて、見事名門に合格したが、それから3年後には半分くらいの生徒が落とされ、ものすごい競争が続くという。

我が家に関していえば、とにかく、長い目で見ることだと思う。今競争に勝っているからどうだ、ということではなく、長い人生の中で大切なことをしっかり身に着けてもらう、それが軸にあれば、あとはどうにでもなると。メンタル面で折れないようにだけ支えてあげればあとは、良いのではないだろうか。

それにしても、親だったら少しでも良い環境に子供を入れてあげたいと思うのは当然だ。間違いなく間違っている中国の教育。現在改革中だが、果たしてどれだけよくなるのだろうか。期待しつつも、この競争原理自体は変わらないからなあ。

これ、本日の北京なり。

本日はお財布を忘れて新聞を買えなかったのでネットの中国新聞网にあった経済参考報の記事より。
法学家热议住宅土地使用权续期:年限不同怎么对待?-中新网

それにしても、中国は曖昧な制度で動いているとはいえ、あまりに大胆に曖昧だ。土地制度の根幹が何も決まっていないのだ。
温州市で20年の土地使用権の譲渡期間が満期を迎えたところ、地方政府がその継続使用費用として多額を求めたのが、この話題のきっかけ。全国に深セン、青島など20年の満期を迎えている地域はたくさんあるという。

因みに北京市は「我々は国の規定の70年の契約のみ。最も早く満期を迎えるところでもまだ40年ある。基本的には満期が来ても自動的に継続するというのが国の規定だが、具体的な事は決まっていない、国に従う」と表明している。基本的に地方は具体的方策案を中央に提出することはできるが、決めるのは中央という。(4月21日新京報)

で、この記事によると、法学界でホットなこの話題について話し合う討論会がこの度人民大学で開催された。各学者の意見はさまざま。まずは、一体誰がこのルールを決めるのか、についての議論。

▼法政大学の江平先生は、「各地方政府が決めるのか?物権法で定められた内容だ。物権法は人大、法律工作委員会で決めること。勝手に地方政府が決めることではない。法律が乱れてしまう」という。彼は更に、「自動的に継続される」とは取り上げられたり、家主が申請する必要がないことと指摘。ただ、自動継続が有償か無償かは記されていない。温州のように数十万元は高いが、適宜はあり得る。という。

▼元法律工作委員会主任の姚紅:住宅地と商用は別扱い。費用については当時経済発展が解決してくれればいい、といってその時が来たらまた考えようということになっていた。2006年に青島で一番初めにこの問題が出たが放ってある。

満期を迎えた土地でお金を請求できるか、という問題がある。理論的に国が持つ請求権を放棄するのか、新宿より高い住宅購入費用は期限限定なのか、市民の民生への影響は重視。一方投資目的や企業行為なら70年満期を迎えたらお金を払うべき。

▼人民大学 楊立新先生:
20年と70年の使用料は区別すべき。温州は不動産価格の3分の1を納めないと継続させないとする政策。満期後は自動継続すべき。まず、70年間の使用とすべき。その差額を払えば良い。

▼人民代表大会法律工作委員会民法室の芭紀華:
「自動継続」と言った時の自動の意味はいかなる条件もつけない、と言う意味。20年も70年も同じに継続すべき。物権法の自動継続と、不動産管理法で定めらた住宅・非住宅地いずれも1年前に申請し、費用を払うべしとする規定は一致していない。2006年当時も意見の不一致が見られた。いっそ、使用権期間を100年、150年に延ばすとか、これ自体を削除した方が良いという意見もあった。

などなど。こんな根本的な事がまだ決まっていないというのだから、中国はすごい。
加藤弘之先生の指摘する『あいまいな制度』そのもの、さく裂状態である。

これ、本日の北京なり。